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2018年05月23日

一行リレー小説

一行リレー小説 その1

 とりあえず何か書かなくちゃ始まらない。そう思うのに筆は一向に進まず、時間だけがただいたずらに過ぎていく。原稿の取り立てまであと三日。これが間に合わなかったら愛猫と心中しようと決意していた。
 足元で鳴く彼女の名前はモネ。名画に全くくわしくない私が、何故こんな名を付けたかを語ると、かのシェヘラザードの千夜一夜よりも長くなるから割愛させて頂こう。モネは彼女が一番好きなおもちゃを咥えて、卓の上に飛んできた。
「こ、これは!」
 後日、肉球を使って物語を紡ぐという天才美少女猫作家モネ・ピカソのサイン会が行われた。



一行リレー小説 その2

 その日の空は普段より青くて、綺麗だった。じっと眺めていると吸い込まれそうになって、私は慌てて目を閉じた。ごうごうと耳元で喚く潮風とさざ波の声が私を海へと誘う。ああ、この海の中に一生いられたら、私も美しいまま生涯を終えられるだろうか。でも、現実はそんなに美しいものではない。
 家族は死に絶え、引き取られた家では蔑まれ、顔には醜い傷がつき、恋人からは逃げられる、そんな絶望に彩られた現実だ。
 朝焼けの空の下、私は希望の海へ身を投じた。目を閉じていても分かるほどの黄金の光に包まれる中、私は生まれて初めて味わう幸福に微笑しながら、ゆっくりと沈んでいった。



 一行で書いているため話としては短いですが、なかなか良い作品が出来たと思います。
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 それでは、お読みいただきありがとうございました!


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Posted by 金沢大学文芸部 at 12:00│Comments(0)作品紹介
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