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2018年06月13日

表グラフ   題名『夏の図書館』 場所「動物園」 季節「梅雨」

  夏の図書館

 傘をさす。
 この国はこの時期になると、必ず梅雨が来る。雨は強くないが、傘を差さないと、全身が必ず濡れてしまう。
 少年が歩く。
 ケージに近づく。象は長い鼻を伸ばして、エサを取った。少年は無言のまま見てる。
 次の瞬間、象は背中の翼で空に飛んでいく。
 少年は困惑した。そして、目を開いて、静かな図書館で、手元のノートに夢を描いていく。

    〈了〉  

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2018年06月13日

三題噺2 〈黄色、雷、ホットドッグ〉

 闇夜をきりさくような光と、大地を揺らす轟音。ビリビリと部屋まで揺らす雷に、思わず耳を塞ぎ、その場に縮こまった。
 雷は昔から嫌いだ。体の芯から揺らすような音も、視界を奪う強烈な光も、何もかも。
 ドオンッとまた、近場に雷が落ちた音がする。早く、早く止んでくれ。そう願うのに、雨足も風の音もどんどん強く、大きくなるばかり。
 いつになったら終わるのだろう。たびたび鳴る雷におびえながら、かるく絶望を覚えたその時だった。ピンポーン、と軽やかに、しかし今の状態には合わないインターホンの音が響いた。
 誰か来たからには出なければいけない。しかし今はそんな状態ではない。どうすべきか悩んでいると、またピンポーンとインターホンが鳴った。
 仕方なく、ふるえる手足に力を込めて立ち上がり玄関へと向かった。
「はーい……」  続きを読む

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2018年06月13日

三題噺1 お題〈黄色、雷、ホットドッグ〉

 インスタント シスターズ

 ホットドッグというものには概して2つのソースによって成り立つ。それは皆さんも御存じの通り、ケチャップとマスタードである。という訳で、中学生の私が編み出したダンスユニット名は「Hot Dogs」。相方の好きな色は赤だと信じ、「けちゃみ」と命名。私? よく聞いてくれた。私は「マスター」、イメージカラーは黄色。声と振り付けの大きさは誰にも負けない。ううん、私とけちゃみなら、どんなステージだって一番になれる。
「ね、けちゃみ!」
「明美だって言ってるでしょ。まな」
 教室の片隅で私の話をうんざりした目で見てくる明美……じゃなかった、けちゃみ。
「アンタ、中学生のくせに高校生と組むとか正気?」  続きを読む

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2018年05月23日

一行リレー小説

一行リレー小説 その1

 とりあえず何か書かなくちゃ始まらない。そう思うのに筆は一向に進まず、時間だけがただいたずらに過ぎていく。原稿の取り立てまであと三日。これが間に合わなかったら愛猫と心中しようと決意していた。
 足元で鳴く彼女の名前はモネ。名画に全くくわしくない私が、何故こんな名を付けたかを語ると、かのシェヘラザードの千夜一夜よりも長くなるから割愛させて頂こう。モネは彼女が一番好きなおもちゃを咥えて、卓の上に飛んできた。
「こ、これは!」
 後日、肉球を使って物語を紡ぐという天才美少女猫作家モネ・ピカソのサイン会が行われた。



一行リレー小説 その2

 その日の空は普段より青くて、綺麗だった。じっと眺めていると吸い込まれそうになって、私は慌てて目を閉じた。ごうごうと耳元で喚く潮風とさざ波の声が私を海へと誘う。ああ、この海の中に一生いられたら、私も美しいまま生涯を終えられるだろうか。でも、現実はそんなに美しいものではない。
 家族は死に絶え、引き取られた家では蔑まれ、顔には醜い傷がつき、恋人からは逃げられる、そんな絶望に彩られた現実だ。
 朝焼けの空の下、私は希望の海へ身を投じた。目を閉じていても分かるほどの黄金の光に包まれる中、私は生まれて初めて味わう幸福に微笑しながら、ゆっくりと沈んでいった。



 一行で書いているため話としては短いですが、なかなか良い作品が出来たと思います。
 よろしければコメント欄に感想をお願いします。
 それでは、お読みいただきありがとうございました!  

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2015年11月10日

路上の生意気 糟谷浩平

 天空から超高速で落ちてきた少年はなんか急にムカついている。
「まじぶっ殺すわ〜」
 と言っている。物騒である。世の中物騒になった。ちょっとそれを証明するのは無理だけれども、目の前でこんなことを言う奴がいる俺の身になってくれれば納得も納得、すごい納得するだろう。
「その気持ちはわからんでもないけどなぁ」
 と小声で言って立ち去ろうとした俺の袖を掴む少年は、何か話した気である。俺はあんまり乗り気じゃない。
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タグ :小説


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2015年04月05日

桐箱入りの梨  仮名石洋平

 今ほど便利じゃない、ちょっと昔の話。小さな池と段々畑、古いお寺に田んぼがある小さな農村の仲良し三人のお話。  続きを読む


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2014年08月05日

春の煩雑  岬 奈未

 二年生に進級したときから、酷く閉鎖的なクラスだと感じていた。前年度のクラスや部活のグループで固まり、他のグループとの交流は浅い。十七歳という年齢にしては異質への許容範囲が狭く、自分たちの肌に合わない者はそれとなく隅に追いやろうとする。
 居心地はあまり良くなかった。ただ、同じクラスには翔子がいたから、まさかユキミに被害が及ぶことになるとは思ってもみなかった。
 自分の席に座って本を読むユキミの前には、なぜか一人のクラスメイトがいる。閉鎖的なクラスのひずみが押し寄せるかのように、矢口実桜はやって来て、さほど仲良くもないユキミに話しかけた。
「カレーを嫌いな人なんていない」
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2014年08月05日

毒になりたがった彼女  珠樹政樹


〈綺麗な花には毒がある〉

 簡単に物語を始めたいのなら、必要なのはこんなものだ。人間を――別に全世界ってわけじゃなくていいけど、とりあえず周りの人達を――2等分すること。そして、その線引きについて考えてみること。問題が肌の色になれば戦争が勃発するし、貧富の差になれば格差論が書ける。
 更にひねりが欲しいなら、その区別をまた2等分、つまり全体を4等分してやればいい。私の世界なんてそれでだいたい充分で、明るい男子と明るい女子、暗い男子と暗い女子、その4種類の人間で中学生社会はできあがり。あえて付け加えるなら、良い奴か悪い奴かって情報くらいだろう。明るくて性格悪い男子と、暗いけど心の美しい女子の組み合わせなら、まあ、それなりのロマンスはできあがる。誰が勝ち組かなんて皆知っているんだから、登場人物のバリエは8パターンあればそれでよし、みたいな。

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2014年08月05日

白昼無  佐久田 尚

 話し声、笑い声、足音、よくわからない叫び声。午後四時丁度、喧騒に満ちた五限直後の校舎。校庭では早くも運動部が走りまわっている。テレポーテーションでも使ったのだろう。混雑した昇降口を抜け、校舎を出ると、途端、西日が照り付ける。眩しさに僕は思わず目を細める。十月の西の空は赤く染まり、東の空にはまだ澄んだ青さが残っている。自転車置き場の人だかりを横目に見ながら校門を出る。夕日の降り注ぐ背中が暖かい。携帯とにらめっこをする女子生徒を乗せた自動車、騒がしい自転車の一団、頼もしい掛け声を響き渡らせて駆けていくラグビー部が次々に僕を追い越して行く。そんなせわしなさに負けないように僕は、いつも通りのんびり歩く。
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2014年08月05日

一途であるということ  古城 昇

                *
 朝、目が覚めると、私の腹を枕代わりにするように彼女が横になっていた。私が体を起こそうとすると、それに気付いた彼女は軽く首をかしげて、私を動かすまいと自身の体をすり寄せてくる。軽く頭をなでてやると、今度は嫌がって布団から出ていく。しばらくすると、また側にやってきては、朝ご飯を作って欲しいと懇願してくるのだ。いじらしくて愛おしい彼女に、私は数年前から虜にされている。


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